ネパール・ポカラでカトマンズ発イエティ航空便が墜落しました。72人が乗っており、少なくとも68人が死亡しています。墜落時の様子を乗客の一人がフェイスブックでライブ配信していたものを入手したのでご覧ください。
動画(閲覧注意)
動画は、旅客機内に座っている乗客と、着陸前の旋回時に窓から下の住宅地を映すところから始まっています。すると突然爆発が起こり、画面が滅茶苦茶になっています。最後の数秒間は凄まじい火事で取り乱した乗客の叫び声が聞こえています。
管理人が入手した動画には地上から撮られた別のビデオもにつけられていました。最後の墜落直前を地上から撮った人によると、機体が急に左側に傾き、ひっくり返った後、爆発して火の玉になったとのことです。
Facebookライブを行っていたのは「Sonu Jaiswal」という乗客です。NDTVによると、ビデオ映像を送ったのは元ネパール国会議員でネパール議会の中央委員会メンバーであるアビシェーク・プラタップ・シャー氏でした。
アビシェーク・プラタップ・シャー氏はNDTVの独占インタビューで、「これは友人の1人が警察から受け取ったもので、本物の記録です。フライトが着陸しようとしていた今日のビデオです」と語りました。
「この航空機はネパールにあるものの中で最高のものであり、主要な航空会社はすべて同じ航空機を運航しています」とシャー氏は言っています。
この墜落事故動画を見ると乗客に混乱していません。酸素マスクなどもしておらず、急激に落下したようです。
何度もネパールに行っている野口健さんのコメント
何度も現地を訪れているアルピニストの野口健さんは、今回の事故に関連して次のようにツイートしています。
「ネパールの飛行機事故のニュースを聞く度に「明日は我が身」と感じる。だいぶ、前ですが、ルクラからカトマンズに戻ろうとルクラ空港で待っても待っても、僕らのだけがこない。少し後で判明したのは、ルクラに来る予定だったその機体が山に突っ込んでいたと。亡くなった方々が本当に気の毒でならない。」
野口さんが乗る予定であった飛行機が墜落していたとは・・・。何と恐ろしいことでしょうか。
ネパール墜落事故の概要
ネパール民間航空局(CAAN)は、現地時間1月15日にネパール中部のポカラで起きたイエティ航空(NYT/YT)のカトマンズ発ポカラ行きYT691便(ATR72-500型機、登録記号9N-ANC)の墜落事故で乗客乗員72人のうち68人の死亡が確認したと発表。これはネパールでの過去最悪の航空機事故です。
ネパールでは新型コロナウイルスの感染拡大を受けて外国人観光客が大きく減っていました。最近はヒマラヤの登山客などが戻り始めていたところです。ポカラ国際空港は1日に開港したばかりでした。山に囲まれた場所にあります。
CAANによると、事故当時天候は良かったとのことです。ポカラ国際空港の関係者は、旅客機は着陸許可を得ていて、機体トラブルの報告もありませんでした。地元メディアによると、機体が墜落したセティ川渓谷は空港から1キロほどのところにあります。
事故現場は、地上から約300メートルの深さがあり、捜索は難航しています。捜索・救助活動のためにネパール軍の兵士数百人らが派遣されました。捜索活動は夜に一度打ち切られて、16日朝にも再開されます。写真にも兵士が映っています。
乗客乗員72人は乗客68人と乗員4人です。乗客は男性が37人、女性が25人、子供が3人、幼児が3人でした。ネパール人53人、インド人5人、ロシア人4人、韓国人2人、アイルランドと豪州、アルゼンチン、フランスが各1人となっています。
BBCによると、事故現場近くに住むディヴヤ・ダカルさんは、15日午前11時過ぎに飛行機が墜落するのを見て、現場に走っていきました。ダカルさんの発言です。
「私が着いた時には人だかりができていた。機体から大きな煙が上がっていた。すぐにヘリコプターがやってきた」
「パイロットは、市街地や住宅を避けようと最善を尽くしたと思う。(中略)セティ川のそばには小さな空き地があって、飛行機はその狭い空間に落ちた」
地元紙ヒマラヤン・タイムズによると、救助活動を手伝おうとした別の住民は「炎が熱すぎて現場に近付けなかった。搭乗者の男性が助けを求めて泣き叫んでいたが、火と煙で助けることができなかった」と発言しています。
機体は複数のパーツに分割され、峡谷に散らばっていました。消防士は、悲しみに打ちひしがれた親族が集まった病院に遺体を運んでいきます。中には見分けがつかないほど焼かれたものもありました。
カトマンズの空港では、家族が付き添われて取り乱していました。情報を待っている間に当局者と大声で言葉を交わすこともあったと報じられています。
ポカラ空港の広報担当アヌプ・ジョシ氏は、事故当時「山もよく見え、視界も良好だった」、わずかに風が吹いていた程度で「天候に問題はなかった」と述べています。また、パイロットは着陸する滑走路を3番から1番に変更すると発信していました。
空港の管制官はこれを承認したとのことです。 「どちらの滑走路も使える状態で、飛行機は着陸の準備ができていた」とジョシ氏は話しています。
イエティ航空は同じ機体を6機保有しています。Aviation Wireよると、事故機はインドのキングフィッシャー航空が2007年8月に受領した機体です。その後2社を経て、イエティ航空が2019年4月に受領しました。
昨年墜落した飛行機も40年経っている機体であったと言われており、機体の古さも影響している可能性があります。
ネパールのプシュパ・カマル・ダハル首相は、「悲しくて悲劇的な事故に深く悲しんでいる」と語りました。また「治安要員、ネパール政府のすべての機関、および一般市民に、効果的な救助を開始するよう心から訴えます」とダハル首相はツイッターで述べています。
首相スポークスマンによると、政府は月曜日に犠牲者を追悼する祝日を宣言しました。インドのナレンドラ・モディ首相とロシアのウラジミール・プーチン大統領は、オーストラリアのネパール駐在大使と同様に、哀悼の意を表しています。
ネパールのイエティ航空は、墜落の犠牲者を悼み、1月16日月曜日にすべての定期便をキャンセルすると発表しました。
ネパールでの墜落事故
ネパールでは昨年5月にも墜落事故で22人が死亡しています。2000年以降、ネパールでは航空機事故で359人が死亡しています。今回事故を起こした航空会社及び傘下の会社の事故で死亡したのは、少なくとも165人にのぼっています。
2001年以降、ヘリコプター事故で死亡しているのは75人。今回の事故機の副操縦士アンジュ・カティワダさんは、2006年に同様の事故でパイロットだった夫を亡くしていました。副操縦士も死亡したとみられています。航空会社によると、副操縦士は夫の死亡保険金でパイロットの訓練学校に通っていたとのことです。
EUは、2013年以来ネパールを飛行安全ブラックリストに載せています。国際民間航空機関が安全上の懸念を表明した後、ネパールからのすべてのフライトは EU空域で禁止されています。過去のネパールの墜落事故では、新しい機体への投資不足や不十分な規制も批判されていました。
ヒマラヤ山脈を擁するネパールは、遠隔地に滑走路があることや天候の急変によって危険な状況が生まれやすいことがわかっています。世界でも有数の、飛行機が運航しづらい地形です。
ネパールでは墜落事故が非常に多いことがわかりましたが、もう二度と起こらないことを切に祈っています。
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